ぴゅちかうの慟哭

自分のための駄文記録

個人的な本読んだ記録:「幽霊列車とこんぺい糖 新装版」(木ノ歌 詠 著)

 やっぱ平日帰ってから感想って難しい。そうは言ってもせっかく読んだのだから記録は残しておきたいところ。
 そんなわけで前文もさくっと済ませて本題に行きましょう。久々にライト(?)なノベルを読めてよかった。

 夏といえばひまわりというイメージはあるのだけれど、今年結局見かけてないな。
 あ、今回いわゆる百合(GL)作品なので、苦手な方はご注意下さい。

幽霊列車とこんぺい糖 新装版(木ノ歌 詠 著)

 自分はそこそこ程度には百合が好きです。百合好きなら通っているであろう作品を通っていないので、はっきり断言するのは少し気が引けるけど。
 ただ、ここ最近はあまり百合百合している作品に触れていない。二次創作の類で百合CPは日常的に見るのだけど、そこから得られる栄養素は「百合作品」とは微妙にニュアンスが違う気がする。

 そういうわけで、なんか百合小説読みたいな~と思って手に取ったのがこちらの本だった。ほの暗い雰囲気の漂った百合に惹かれる気持ちに嘘はつけなかった。

寂れた無人駅のホーム。
こんぺい糖。ひまわり畑。
そして、あの廃棄車両。
リガヤという名の、不思議な彼女を連想させる四大要素。
思えばそこから、あたしの夏は始まった。

Amazon商品ページより引用)

 主人公の中学2年生、有賀海幸は、とある理由で保険金自殺計画を建て、地元の町のローカル線へ赴く。しかしながら飛び降りる予定だった路線はすでに廃止になっており、駅で途方に暮れることになる。
 そこにリガヤと名乗る少女が現れ、廃棄列車を『幽霊鉄道』として蘇らせ、美幸に死を与えることを宣言する…という感じの話。

 どこか陰鬱とした雰囲気の百合を接種したい…というニーズは見事に満たされた。
 絶望の深さが強調される美幸・明るくて奔放、無邪気な様子のリガヤは対称的に見えるのだけど、物語が進んでいくにつれて違った面が見えてくる。
 彼女が『幽霊鉄道』を作るに至った動機は何か? その全貌を知った時、美幸は何を思うのか。物語が後半に差し掛かるにつれて深くなっていく「死」の雰囲気と百合描写が好きでした。

 惜しむらくは、作品世界を形作る諸要素が少しわざとらしく感じられてしまった点。読み手の自分がひねくれているが故…というバイアスが多分にあると思うのだけど、美幸の絶望に上手く入り込むのが難しかった。
 あとがきを読むに、元々はもっと世界が広かったものをコンパクトにする必要が生じたようなので、もしかしたらそのせい?

 ただ、それ以上に脳裏に浮かぶビジュアル点が非常に高い。幽霊鉄道、ひまわり畑、ほの暗い空気感で絡む少女2名。
 夏という季節を強く感じられる、良い話でした。

 

 あ、作中には映画の「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のネタバレが含まれるのでご注意下さい。自分は見てなかったけど気にせずガッツリ読めました。
 映画の情景が物語とリンクするの、お洒落で良い。